おっぱいに吸い付かない~授乳が上手くいかないとき 助産院 北野ミッドワイフリー ブログ, 母乳育児

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おっぱいに吸い付かない

人間は哺乳類ですから、赤ちゃんはおっぱいを飲む前提で産まれてきたはずなのに、いざとなると上手く吸い付かないことがあります。

もちろん、何にでも得手不得手と言うのがあって、最初から要領の悪い子もいます。私の助産院ではほとんどの赤ちゃんが母乳のみで育ちますが、数十人に一人位、「あんた哺乳類でしょ?」と聞きたくなるくらい下手な子がいます。また、一見して問題なく吸っているようでも、吸いかたが浅くてお母さんに痛い思いをさせる子はそんなに珍しくありません。
吸い付かせるのには困らないが痛みがある場合については、「乳首が痛い~産まれてすぐの赤ちゃん」の記事をご参照ください。

産まれた当日から哺乳瓶でミルクや糖水を飲ませる習慣のある産院では、上手く吸い付かない赤ちゃんはぐっと多数派になります。
お母さんの乳首と哺乳瓶では吸い付きかたや飲み方が違い、赤ちゃんは与えられたもので生きていくための努力をするからです。

多くの哺乳瓶は、乳首が細長く作られていて、赤ちゃんが大きく口を開けなくても差し込むように吸い付かせることができます。これでほんの数回飲むと、鼻先でおっぱいの匂いがしても、赤ちゃんは口を大きく開けなくなります。お母さんの乳首は柔らかいので、シリコンの乳首のように押し込むことはできませんから、赤ちゃんが自分から口を縦に大きく開けてくわえてくれなければ吸い付けません。

母乳は乳首を上顎と舌全体で包むようにとらえ、舌を波打たせるように使って飲みます。試しに唾をゆっくり飲んでみてください。その、「ごっくん」という動作で飲むのです。しかし、哺乳瓶でこれをすると、飲み下す前に喉の奥に大量のミルクが流れ込んで咳き込んでしまいます。赤ちゃんは苦しいので、舌の奥で喉に蓋をして、口にミルクを貯めて飲むようになります。すると、舌を前後に忙しなくスライドするように動かす癖がつきます。
これをお母さんの乳首に持ってくると、赤ちゃんは吸い付こうとしているのに舌が乳首を押し出してしまいます。

上手く吸い付かない赤ちゃんは、大抵この口の開きと舌の動きの両方に問題があります。
この、哺乳瓶での吸い癖が原因でおっぱいに吸い付けないことを、「乳頭混乱(ニップルコンフュージョン)」と言います。

産まれてすぐのカンガルーケアの時にはちゃんと吸い付いたのに、産後のお母さんを休ませようとの親切心から赤ちゃんを預かって、哺乳瓶で授乳をした後におっぱいをあげようとしたら吸い付けなくなっていた、ということがよくあります。
健康な赤ちゃんは3日分の水筒とお弁当を持って産まれてくると言われています。安易に母乳以外のものをあげないのが大切です。

乳頭混乱では、お母さんの乳首が短いほど、全く吸い付けずに赤ちゃんが苛立って大泣きするケースが多くなるので、産院のスタッフに「吸い付けないのはお母さんの乳首が短いから」と言われた、という方がたくさんいらっしゃいます。実は、まっ平らな乳首でも、それどころか凹んでいる乳首でも、上手に吸い付く子は幾らもいます。お母さんの乳首のせいではなく、吸い付けないのは赤ちゃんが下手なのです。

さらに、シリコンが硬めの哺乳瓶では、舌を使うよりもシリコンの腹を顎で噛むようにした方が楽に飲めます。特に哺乳瓶を長く使うほど、噛んで飲む癖がつよくなります。
赤ちゃんによってはお母さんが痛いと思うほど強く噛むようになるのと、噛んでも母乳は出てこないので、有効な授乳になりません。手や機械で搾乳するとたくさん取れるのに、赤ちゃんが吸っても幾らも飲めないという場合、この噛んで飲む癖によることがよくあります。

赤ちゃんの吸い方が下手で吸い付けない場合、私はよくトレーニング用の哺乳瓶を使って赤ちゃんに吸いかたの練習をさせるようにお勧めしています。
ピジョンから出ている、「母乳相談室」という哺乳瓶で、産科でよく普及しているので、持っている方も多いのですが、正しい使い方が一緒に普及しておらず、宝の持ち腐れになっていることが多い商品です。

この、トレーニングとしての授乳の場合、通常の赤ちゃんを抱いて片手で行うのは困難です。赤ちゃんを、授乳クッションなどを使って頭が少し上がるように寝かせて始めましょう。

まず、赤ちゃんの半端に開いた口に乳首を押し込むように吸い付かせてはいけません。赤ちゃんの鼻や上唇にシリコンの先をチョンチョンとつけるようにして赤ちゃんが上に向かって探すように誘います。赤ちゃんの口が縦に大きく開くまで、辛抱強く待ってください。泣いてからでも良いので、口が充分開いてから口に入れます。赤ちゃんは学習する生き物です。これを繰り返すと、段々口の開きが良くなります。

口に乳首を入れたら、赤ちゃんの顎に指を引っかけて、胸の方に引き下げます。下唇の赤い部分が外に出て、シリコン乳首を止めているプラスチックのリングに着き、赤ちゃんの口角が開いて口が「あ」の形になるまで充分に開けさせてください。
上唇は左右からつまむようにすると、赤い部分が外に出ます。

シリコン乳首が残らず口に入ったら、赤ちゃんの口の力で出てこないように瓶を押さえてキープします。口角が開くと舌を奥に引っ込めにくくなるので、繰り返すことで舌が前に延びた正しい位置で吸うようになり、噛むような飲み癖も矯正されます。

初め、赤ちゃんは何をされているのかわからずにビックリして大泣きすることでしょう。ここで「可哀想」と思って手加減してしまうとトレーニングにはなりません。
おっぱいに吸い付きながらうとうとする、皆が一番幸せな時間が持てていないことがそもそも可哀想なのですから、「頑張れ~」という気持ちで手加減なしにしてください。赤ちゃんはとても覚えが早いですから、キッチリ練習できれば、丸2日程でおっぱいを吸うための口の使い方をマスターします。おっぱいに吸い付かせてみてください。
赤ちゃんにトレーニングをしている間、吸い付かせる代わりに搾乳をたくさんしていただくと、母乳の分泌が増えます。赤ちゃんが吸い付いたときに母乳がたくさん出る方が、赤ちゃんが意欲的に吸うので、より有効な授乳になります。
授乳の正しい抱きかたや吸い付かせ方は「乳首が痛い~産まれてすぐの赤ちゃん」の記事をご参照ください。

もうひとつ、上のお子さんを母乳で育てたという方に多いのですが、乳頭混乱のときとは逆で、乳首は充分長くて赤ちゃんの口には入っているのに、吸わずにキャンキャン泣く子がいます。この場合は乳首が柔らかすぎて、赤ちゃんが吸い付くものとして認識できないことによります。大抵、お母さんの指を口に入れると吸い付きます。この場合は、吸えない、吸えないと言いつつ、2-3日経つと、お母さんの乳房が張ってくるのと同時に乳首も固くなってくるので、あるとき急に吸い付くようになります。吸えない間、哺乳瓶を使うと乳頭混乱を起こしがちですので、何か飲ませる場合にはコップであげましょう。

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